Base Ball Bear・湯浅将平の離脱によせて


http://www.universal-music.co.jp/base-ball-bear/news/2016/03/02


特に腑に落ちないのは、端的に述べると3点。


一つは、過去最高作のアルバムを出したこのタイミングであること。自分にとっては『十七歳』から『二十九歳』まで一部分はあっても、全編通して面白いと思えるアルバムは無かった(概要はここで)(ていうかいきなりディスりから入んのかよ)。んで、『C2』が『二十九歳』から1年というスパンで性急にリリースされたのは、小出から見た現存のギターロック界隈、つーか身も蓋も無いこと言うとロキノン界隈に危機感を感じた結果ではないだろうか。実際完成された『C2』は、インタビューで大口叩いてたくせに大したことなかった『二十九歳』の存在なんか忘れるほどに素晴らしい作品だった。そしてこの作品と小出の現状認識をもって、いよいよゼロ年代ロキノンバンドが反撃の狼煙を上げるのか、と期待してたタイミングでのこの知らせ。残念だ、という言葉だけでは言い表せないほどにどんよりとした気持ちが拭いきれない。

さて、Twitter上で今回の反応をざっと見ると「なんで」とか「どうして」というツイートが目についた。が、何となく理由は察せなくもない。まぁ真っ先に思いついたのは、製作中に小出が湯浅に強く当たりまくったのが積もりに積もった結果だろう。とか書くとまるで小出を悪者に仕立てたい様な物言いだが、もちろん違う。既に述べた様に、現状のロキノン(=ギターロック)シーンに強い危機感をもった小出がバンドをビルドアップして、口だけじゃなく作品として提示することは当然の成り行きだと思う。そう考えると湯浅は『C2』の出来に満足してなかったか、それよりもバンド内の空気に耐えられなくなったのか。。昼間のワイドショー並みの勝手な想像でしかないけど。


二つ目は、2月中旬に事が起きて2週間程度で湯浅が去るという決定を下したこと。その理由は直近でツアーが迫ってるからに他ならないが、いくら何でも尚早としか思えない。ツアーは現在サポートメンバーを迎えて行っているが、だったらツアーはそのままサポートメンバーを入れて湯浅は「休止」の扱いでもよかったのではないか。 ...まぁ休止から脱退ってパターンも珍しくないが。


そして最も納得いかなく、このエントリーでいちばん主張したい3つ目の理由は、Base Ball Bearこそが自分が熱中した中でロキノン・オブ・ザ・ロキノンバンドのど真ん中であるからだ。ロキノンロキノンうっさいのでこのバンドをロキノンたらしめてる主立った3つの要素を述べてみる。

まず楽曲。ゼロ年代以降のロキノンギターロックとは、Number Girlをフォーマットとして、ニューウェーブorポストパンクリバイバル(Base Ball Bearで言うとXTCThe Policeが顕著か)の合いの子であるように思う。(そもそもナンバガニューウェーブに影響されてる部分があるっちゃあるけど...)

そんでロキノン系なんて名前が付くくらいなので、当然ロキノン関連の媒体(雑誌、夏・冬フェス)にも常連。

最後に、「バンドという存在は運命共同体である」みたいな言説で音楽以外のバックボーンも過度に持ち上げられてること。それら3つが揃っちゃうともう役満で超優等生なロキノンバンドの申し子誕生である。

それを象徴してるのは良くも悪くも悪くも名物になってる2万字インタビュー。音楽に興味を持ったキッカケやら過去のトラウマやらどうやって現在のバンドメンバーになったかやら、要するにフロントマンのバックグラウンドを根掘り葉掘り訊くわけで。確か『十七歳』リリースのタイミングで小出の2万字インタビューが行われたと思うけど(現在雑誌が手元に無し)、そのアルバム内容と引っ掛けて高校でのバンド結成の経緯が掲載されていた。

そこで語られてたのは、高2という青春の真っただ中の時期にバンドを結成したこと。文化祭直前に堀之内と衝突して文化祭ライブで解散が決まったこと。しかしライブは成功して気を良くした小出がこのメンバーでバンドを続けることを決意したこと。それでも渋る湯浅を一晩かけて説得したこと... バンド幻想を重んじるロキノンにとってこれ以上ないくらい格好のバンドではないだろうか。そしてBase Ball Bearにお熱だった高校の3年間毎月欠かさずロキノンを買ってた身としては、その手の話には魅了されてしまうわな。(でもアルバム『十七歳』はものすごく嫌悪してたけど)


しかしそんな清く正しいロキノンバンドのバイオグラフィーを歩んで来たのに、直接メンバーで話し合いすらしないままバンドから湯浅が去るという決断に至ったのがどうしても納得できない。だが堀之内の「怒りすら感じる」という言葉にも表れてるように、メンバー・スタッフの声明文から動揺や焦燥がダダ漏れてることも理解できる。それでも、それだからこそ、ツアーの1本だろうが夏フェスだろうがアニバーサリーイヤー無視して活動休止してでもメンバー間でコンタクトを取って欲しかった。それが、かつて自分が熱狂していて、今まさに再び夢中になれそうな唯一のロキノンバンドに対する正直な感想だ。



「"若手"男女4人組バンド」の枕詞も、かつてよく出演していたSHIBUYA-AXも気付けば無くなり、時の流れは止められない。だが、しかし、、、



バンド音楽の類いを聴き始めて11年の中で、最も狼狽させられた2016年3月の件に関して。


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(小出が『二十九歳』リリース時のUstで「関根が妊娠してバンド活動出来なくなったらその間にGorillazみたいな一人覆面ユニットやりたい」とかポロっと言ってたけど、バンドは小休止してそっちやってくれないかな。というかどういう曲つくるかすっごい興味あるし。)